ネットショップ運営者がChatGPTで月20時間削減した方法 “作業の山”が“発想の余白”に変わるとき
かつて「手が足りない」は当たり前だった
ECサイト(ネットショップ)を運営している方なら、次のような感覚に覚えがあるだろう。
- 毎日が「発送・問い合わせ・在庫確認」の繰り返し
- 商品登録ひとつにも説明文、タグ、SEO対策が必要
- インスタ・X(旧Twitter)・LINEなどSNSも更新しなければ
便利なシステムが増えたとはいえ、ネットショップ運営は“全部自分で”が基本だ。特に個人事業主や少人数のチームでは、ひとつの作業が滞るだけで売上に響く。
そんな中、ある小さなアパレルECサイトの店主が、ChatGPTを導入したことで、1か月あたり20時間以上の作業時間を削減した。
ただ単に「業務が楽になった」のではない。
彼が得たのは、“考える時間”と“戦略を練る余白”だった。
この記事では、その店主の実践例をもとに、ChatGPTを「どこで、どう使えば」具体的に効果があるのかを探る。
“人の代わり”ではなく、“人の分身”として使う発想
まず明確にしておきたいのは、「ChatGPT=人間の代替」という考え方ではないということ。
店主はこう語る。
「ChatGPTは“自分がもう一人増えた”感じ。任せられるところは任せるけど、最後は自分でチェックしてる」
つまり、“責任ある自動化”を目指している。
では、どんな業務でChatGPTが「分身」として機能するのか?以下、具体的に見ていこう。
削減時間①:商品説明文の自動生成(週5時間)
たとえば、Tシャツのようなベーシックな商品でも、説明文には以下のような要素が必要だ。
- 素材(コットン100%など)
- 着心地の特徴(柔らかく肌なじみが良い、など)
- 着回しの提案(カジュアルにもきれいめにも対応)
- シーズン性(春夏に最適)
これを毎商品、自分で書いていては日が暮れる。
店主は、次のようなプロンプト(指示文)をテンプレ化していた。
この商品の説明文を300文字以内で書いてください。
素材:綿100%、ユニセックス、カラーは白と黒、サイズはM・L・XL。
ポイントは「やわらかい着心地」「どんなスタイルにも合わせやすい」です。
これだけで、ChatGPTはSEOにも配慮した“人間らしい”説明文を瞬時に生成してくれる。
しかもバリエーションをいくつも出せるため、同じような商品でも表現を変えて重複回避できる。
削減時間②:お客様対応の文面作成(週3時間)
お客様からの問い合わせには、迅速かつ丁寧な返信が求められる。
特に「配送の遅れ」「サイズの交換」「領収書の発行」など、対応ミスが口コミに直結する領域は慎重にならざるを得ない。
店主は、定型的なやりとりはChatGPTで下書きを作成し、それを少し手直しして送るスタイルに変えた。
「注文した商品が届いていません」という問い合わせに対して、
お詫びの言葉を入れつつ、配送状況の確認案内を行う返信文を作ってください。
→ たった数秒で、以下のような文面が出力される。
この度は商品のお届けが遅れており、大変申し訳ございません。
現在、配送業者に状況を確認中でございます。詳細が分かり次第、すぐにご連絡いたします。
お待たせして恐縮ですが、今しばらくお時間をいただけますと幸いです。
こうした“下書き作成”にかかる時間が減るだけでも、精神的な負担は大きく違う。
削減時間③:Instagram投稿のキャプション生成(週3時間)
ネットショップにとって、SNSは商品の魅力を「ビジュアルと感情」で伝える場だ。
しかし、キャプション(投稿文)のネタが尽きると更新が滞りがちになる。
店主は商品写真とキーワードを使って、ChatGPTにキャプション案を出させていた。
生成してほしいキャプション:
・白Tシャツ
・シンプルコーデ
・夏らしさ
・20代女性向け
・#ootd #夏コーデ
→ 出力例:
白Tシャツでつくる、夏のミニマルコーデ🌿
シンプルだけど手抜きに見えない、そんな“ちょうどいい”が今の気分。
#ootd #夏コーデ #白T #ミニマル女子 #大人カジュアル
手書きしていたときに比べ、更新頻度が2倍になったという。
削減時間④:月次レポートやSNS分析コメントの下書き(週2時間)
InstagramやBASE、Shopifyのアクセス解析データを見ながら、毎月の売上傾向や投稿効果を店主はメモに残していた。
この分析コメントの要約作業にも、ChatGPTが活用されている。
このレポートから、今月の傾向を箇条書きにして簡潔にまとめてください。
→ 出力例:
- Instagramからの流入が先月比+22%
- フォロワー数は月初比+198人(過去最大)
- 人気の投稿は白シャツのコーデ投稿(保存数が通常の3倍)
このように、頭の中の“ざっくり分析”が整理され、次月の戦略立案がスムーズになる。
削減時間⑤:商品レビューの要約(週1時間)
ネットショップでは、レビューコメントが商品購入の決め手になる。
しかしレビューが増えてくると、「どこが評価されているのか」を把握するのが難しくなる。
以下のレビューを元に、共通して評価されているポイントと、改善要望を箇条書きでまとめてください。
→ 出力例:
- 良い点:生地が柔らかく着心地が良い、サイズ感がちょうど良い
- 改善点:乾燥機使用で縮んだとの声が複数あり
これにより、仕入先や製造元との調整にも活かせる“現場の声”が、データとして整理される。
ChatGPT活用の落とし穴と、回避法
もちろん、すべてが“うまくいく”わけではない。
店主は導入当初に、いくつかの失敗も経験した。
主な落とし穴:
- 定型文っぽさが出すぎる:コピペ感が強く、お客様から「AIですか?」と指摘されたことも
- 誤った情報を混ぜる:例えば素材や価格に関する表記で、勝手に“創作”されてしまう場合があった
対処法:
- 出力された文章を必ず“自分の目”でチェックする
- テンプレは使いつつも、「語尾を変える」「語調を調整」するだけでも“人間らしさ”が出る
- ChatGPTを「ベース原稿生成ツール」として捉える
ChatGPTは、現代の「秘書」である
業務効率化のために、かつて多くの会社が“人を雇う”ことで課題を解決してきた。
しかし、個人や小規模ビジネスではそれが難しい。
- 雑務を任せることで、戦略を考える時間が生まれる
- 顧客対応の精度が上がり、信頼が蓄積される
- SNSや販売チャネルでの発信力が強化される
今や、ChatGPTは「技術」ではなく「選択肢」だ。
まとめ:20時間は“時短”ではなく、“再投資”
店主は、月20時間の削減によって「もっと大事なことに時間を使えるようになった」と語る。
- 顧客データを元にした新作の企画
- リピーター向けのクーポン戦略
- 他ショップとのコラボ提案
ただ作業が“早くなった”のではなく、視点が変わったのだ。
時間を削るためのChatGPTではなく、時間を育てるためのChatGPT。
それが、ネットショップ運営者が実感している“もう一つの成果”なのかもしれない。