AIで事業計画書を作る!創業支援にも使えるテンプレート紹介

■「事業計画書」が、AIで“書ける”時代に突入した

創業の準備に欠かせないもの──それが「事業計画書」だ。

金融機関への融資、自治体の補助金申請、投資家へのプレゼン、そして何より、自分自身の“考えの整理”として。事業計画書は、創業者にとって羅針盤となる存在である。

ところがこの計画書、書くとなると意外に難しい。

事業内容は頭にあるのに、言葉にするのが難しい。
数字の整合性に自信が持てない。
なにから書き始めればいいのか分からない。

こうした“創業者あるある”の壁を、近年、AIが軽やかに乗り越えていく事例が出てきている。

そう──AIが、あなたの事業計画書を“代わりに書いてくれる”時代が到来しているのだ。

■「創業支援×AI」という未開拓のフロンティア

AIが文章を書けることは、もはや珍しくない。ブログ、メール、広告コピー、プレゼン資料──その応用範囲はすでに広く、一定の成果も出始めている。

しかし、「創業支援」「事業計画書の自動作成」という分野においては、まだ多くの可能性が眠っている。

この分野の特殊性は、大きく3つある。

  • 極めて個別性が高い(テンプレ通りでは済まない)
  • 文書だけでなく、数値・戦略・根拠が一体化している
  • 創業者本人の“熱量”と論理が両立している必要がある

つまり、「AIに任せて終わり」では済まされない。
だが裏を返せば──ここをクリアできれば、AIは創業者にとって最強の相棒になる。

■ChatGPTで事業計画書をつくる流れ(実用編)

▼ステップ①:まず“ラフ”に語ってみる

AIにいきなり「事業計画書を書いて」と頼んでも、良い結果は出にくい。
まずは雑談のように、ChatGPTに「私がやろうとしているビジネス」について話してみるのがコツだ。

例:
私は、40代の女性を対象にした低糖質スイーツのオンライン販売を始めようとしています。
ターゲットは健康意識が高く、美容にも気を遣っている人。
店舗は持たず、まずは月商30万円を目指したいと考えています。

この段階では、構成や整合性は一切気にしなくて良い。
思っていることを素直に伝えよう。AIがあなたの話を受け止め、要素を抽出していく。

▼ステップ②:「要素分解」させる

次に、AIに対してこう伝える。

上記の内容から、事業計画書の章立てごとに要素を分解してもらえますか?

これにより、以下のような出力が得られるだろう。

  • 事業概要:低糖質スイーツのD2C(ネット直販)事業
  • ターゲット層:40代女性/健康・美容志向
  • 商品の特徴:糖質制限、自然素材、小ロット対応
  • 市場分析:健康志向の食品市場/競合との差別化
  • 販路:Instagram広告/BASEでのEC展開
  • 数値計画:初期費用20万円/月商30万円目標

▼ステップ③:「章立てテンプレート」に流し込む

ここでは、AIに以下のようなテンプレート構造を提示する。

1. 事業の目的と背景  
2. 提供する商品・サービス  
3. ターゲット市場と顧客ニーズ  
4. 競合との差別化  
5. マーケティング戦略  
6. 売上計画と収支予測  
7. 今後の展望とリスク対策  
8. 創業者のプロフィール・想い
    

ChatGPTは、これらの項目に先ほどの情報を当てはめて、実にそれらしく計画書を組み立ててくれる。

■AIの限界を補う、3つの“人間の仕事”

ただし──ここで安心してはいけない。
AIが出力したものは、あくまで「たたき台」である。

完成度を高め、信頼に足る文書に仕上げるためには、以下のような“人間の役割”が不可欠だ。

  1. ファクトチェック
    たとえば、競合他社の市場シェアや市場規模は、ChatGPTが“それっぽく”書いたフィクションであることも多い。必ず実データで確認すること。
  2. 数字の整合性チェック
    売上とコストのバランス、利益率、キャッシュフローなど、Excelで再検算しよう。ChatGPTは“ふわっと”した計算しかできない。
  3. あなた自身の想いの挿入
    AIには、創業の「覚悟」や「悩み」は書けない。
    それを語れるのは、あなた自身だけである。

■創業補助金や融資にも活用できるのか?

ここで多くの人が気になるのが、「補助金や融資申請に使えるのか?」という点だ。

結論から言えば──“一次草案”としては非常に有効である。
事業計画書を一から作るのは時間もエネルギーもかかる。AIを使えば、必要な構成と表現のベースが短時間で整う。

実際に、以下のような活用事例が報告されている。

  • 地方創業支援センターのプレ相談にAI草案を持参
  • 日本政策金融公庫の面談で「計画書の雛形」として使用
  • 補助金の専門家と共有し、ブラッシュアップに活用

ただし、提出用の“最終版”は、必ず人間の専門家(認定支援機関や税理士など)のレビューを経ることが推奨される。

■AIテンプレートが拓く「誰でも起業できる社会」

従来、事業計画書の作成には一定のビジネス経験や資料作成スキルが求められていた。だが、AIの登場により「起業のハードル」が確実に下がっている。

特に次のような人々にとって、AIテンプレートは強力な味方になる。

  • 初めて起業する主婦や副業希望者
  • 地方在住で支援機関にアクセスしづらい創業者
  • 日本語が母語でない外国人創業者
  • 忙しくて夜しか時間が取れない兼業起業家

彼らにとって、24時間365日、相談できるAIは、精神的にも実務的にも心強い存在になる。

■「AIの支援で起業する」ことの是非

最後に──これは議論の余地がある視点だが、AIが創業支援の現場に入ることで、「起業の意味」自体が変化し始めているともいえる。

かつては“ビジョン”や“志”がなければ起業などできないと言われた。
だが今では、「なんとなく思いついたアイデア」をAIと対話する中で膨らませ、ビジネスとして形にしていくことができる。

これを「軽薄」と見るか、「民主化」と見るかは、時代の感性に委ねるしかない。

ただ一つ確かなのは、AIの力を借りてもいい──と認めた瞬間、事業は一歩前に進むということだ。

■まとめ:AIで、あなたの想いを言語化する

事業計画書とは、「思いを言葉にする作業」である。
AIは、その翻訳者になれる。だが、言葉の“源泉”は、あなたの中にある。

その源泉が濁っていなければ、AIはきっと、理路整然とした、しかも熱のある計画書を仕立ててくれるだろう。

創業は、人生において一度あるかないかの冒険だ。
その第一歩を、AIとともに踏み出すという選択──
今、それが十分に現実的な選択肢となっている。